うらなり


「坊ちゃん」を若い頃に読まれた方は多いと思います。

うらなりと言うキャラクターを覚えていますか?

四国松山の古賀さんという真面目だけど、少々陰気くさいキャラクターが出て来て、赤シャツなる策士に婚約者であるマドンナを横取りされるために、巧妙に宮崎の延岡に飛ばされる。

若い頃、読んだ時は、「自分は絶対、うらなりタイプではない」と思った方も多いのではないでしょうか?

坊ちゃんは、彼独特の正義感から、このうらなりに過分に同情し、同じく正義感の強い山嵐と、赤シャツらを懲らしめに入る。むしろ、若い頃は、自分を坊ちゃんや山嵐的な正義感の強い人間に重ね合わせて読まれる方の方が多いと思います。

ただ、うらなりも当然、正義感はあります。ある意味、坊ちゃんや山嵐は、蛮勇の持ち主であり、今の時代の多くの方には当てはまらないのではないかと思います。(暴力ふるったり、玉子投げつける等の大人はあまり見ませんものね。)

むしろ、うらなりの方が温厚でサラリーマンの鏡のような感じがします。

特に、ある程度、人生の深みを経験して来た歳になると、うらなりこそが、自分の人生と重ね合わせられるキャラクターなのだと気が付くはずです。

彼の人生にドラマチックな展開は起きません。淡々と働き、妻を貰い、家族が出来、孫が出来、そして妻に先立たれるという、坊ちゃん事件以降の彼の人生が、時代の変遷と伴に淡々と描かれています。

マドンナとの再会でさえ・・・

そして、小説の最後、うらなりの現状を記した49文字は、「やはり、そうなるのかな」と思わせるものですね。

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