山田長政 小話① :ペトロ岐部について

今回の山田長政のブログを書くにあたり、遠藤周作の「王国への道」を参考にしました。(写真①


日本人街に行く前に、全部読んで行ったので、また随分と現地で妄想が膨らみました(笑)。
①遠藤周作「王国への道」

この小説、遠藤氏らしいなあと感じたのは、「ペトロ岐部」という殉教者を、準主人公として登場させていることです。
最近、映画でも話題になっている「沈黙」も、遠藤氏の代表作品です。(写真②
② 映画「沈黙」

彼のキリスト教的世界観から見ると、まさに山田長政は、世俗的な地位・名声・富等を追い求めることが野望であり、それらは全てむなしいものだということを、この山田長政と対極にある「ペトロ岐部」に言わせているのです。


ペトロ岐部は、長政がアユタヤへ行くのと同時期に、ローマまで単身で渡り、司祭の資格を取得し、殉死すると分かっていながら、キリスト教禁止令の出ている江戸時代鎖国の日本に戻ってくるのです。

日本に戻る途中、アユタヤの日本人街で偉くなった長政と再会を喜びます。

ペトロ岐部も野望を持って、遠くローマまで渡ったのです。
ただ、その野望は長政とは全く反対の、死んでも守る程に固い「信仰」を得ることでした。

この「信仰」の固さをテーマにしたのが、「沈黙」ですが、ペトロ岐部も予見されていた通り、日本国内で逆さづり等の拷問にあいながら、「信仰」に死ぬのです。(絵③
③ペトロ岐部

実際には、ペトロ岐部と長政が、会っていた可能性は低いのです。



遠藤氏は、この2人を会わせることにより、長政の野望が如何に危いかを表現したかったのだと思います。

ペトロ岐部も長政も殺されます。ペトロ岐部は殉教です。長政は過去に裏切った人の娘に裏切られて毒殺されます。

野望を持つあなたはどちらが良いですか?

と遠藤氏から聞かれている気分になりますよ。

お読みいただき、ありがとうございました。


いつものお願いで恐縮ですが、励みになりますので「日本史人気ブログランキング」のポチを宜しくお願いします。