あまり前評判も知識も無いまま、NHKジャーナルのPodCastを聞いた時に、そこそこの評価がされていたのでチョイスしたのですが、これが想像以上に面白かったです。
①映画「ダンケルク」 |
「陸・海・空」の3つの恐怖というかハラハラドキドキが楽しめる、とは云うものの、戦争アクションにありがちなドンパチドンパチという訳では無く、かと言って、もう一方でよくある悲惨な感じもない、つまり説教臭くないのです。
また、そこで起きている事象については、陸海空それぞれの視点で描かれているので、時間的に遡ったり、先に進んでいたり、映画の途中で、「あ、さっきの映像は、この話の今上映しているこの場面を空から見たものだったのだな。」等の話の戻りが何もナレーションも無く進みます。これも話にメリハリを付けているので、最初から最後まで話に飽きが来ないようになっています。
そして、この手の戦争映画は長いことが多いのですが、1時間45分と比較的短いです。
是非、お薦めします。
ただ、私は、見た後に知ったのですが、ダンケルクについて、以下の基礎知識がある方が映画の背景が分かり、理解が進みやすかったなあと反省しています(笑)。
これから見に行かれる方で、「ダンケルクって何だ?」と思われる方は、是非ご一読下さい。
◆ ◇ ◆ ◇
第2次世界大戦初期の1939年の西部戦線、ドイツ軍は戦車、航空機等の新しい兵器等を最大限活用した戦法、電撃戦を編み出し、英仏軍をヨーロッパ大陸から駆逐し始めます。(写真②)
②ナチス・ドイツの電撃戦(装甲車) |
初期のドイツ軍は凄いですからね。何が凄いかと言うと技術力です。
フォルクスワーゲンを開発した技術、アウトバーンのような高速道路も大戦前に作っていますし、航空機、戦車、Uボート、大概の近代兵器は非常にレベルの高いものを作り出しました。(写真③)
③大戦前のアウトバーンを疾走するフォルクスワーゲン |
戦争初期は、それらの技術を駆使した兵器を総動員して、ヨーロッパ大陸内の英仏軍に宛てたのですから、それは英仏軍はどんどん追いやられる訳です。
1940年には、ベルギー・フランス国境を突破し、英仏軍をフランスの国境の街、ダンケルクに追い込みます。(地図④)
④ダンケルクの位置 フランスの最北端 |
ダンケルクはフランスの最北端の街であることから、ドーバー海峡を渡れば仏兵士たちはイギリスへ逃げることが出来ます。
ただ、ここに40万人もの兵士が追い込まれたのです。40万人一気にドーバー海峡を渡ることは不可能です。(写真③)
③ダンケルクでドーバー海峡を渡る船を待つ英仏軍 (映画より) |
当時の英国首相チャーチル(写真④)は、35万の英仏軍を救出するようイギリス国内へ呼びかけます。
④ウィンストン・チャーチル英国首相(当時) |
この時、ドイツ軍は来るべき英仏軍の反撃に備え、それまで電撃戦で酷使していた装甲車らの出動を控えてしまうのです。そして主に空軍によるドーバー海峡輸送船の撃沈に頼り、このダイナモ作戦に対抗しようとします。(写真⑤)
⑤ドイツ軍はドーバ海峡を渡る英仏軍に対し空軍を投入 |
しかし、英仏軍が集まっていた海岸への爆撃は、砂浜の砂がクッションとなり破壊力を減衰させたことや、イギリス空軍の活躍などで、ダンケルクに集結していた英仏軍の殆どが、ドーバー海峡を渡ることが出来たのです。
結局、ドイツ軍に捕虜とされた3万人、死者1万人の計4万人を除いた36万人が、1940年5月10日 から6月4日の間に、イギリスに生還することが出来ました。
この戦いの後、ドイツ軍のヨーロッパ大陸内における勢いは止まらず、ご存知の通りフランスはあっという間に崩壊、国としてほぼ瀕死状態のところへ、イタリアが宣戦布告。
ムッソリーニはかなり卑怯と後で揶揄されますが、6月13日にパリはドイツ軍により陥落し、同月21日にはフランスはドイツに降伏するのです。(写真⑥)
⑥パリ陥落(占領するドイツ軍) |
しかし、西部戦線の長期的な観点で見ると、チャーチルのこのダンケルクにおける措置が、後の戦線における人的資源の確保という観点で素晴らしく効果があったのです。英仏軍ら連合軍が盛り返す原動力の一因は、このダンケルクでの36万人の兵士救出作戦にあったと言われています。
◆ ◇ ◆ ◇
ざっと、こんなところです。
映画自体は、このような歴史的背景がネタバレに繋がるような話ではなく、あくまでその戦場で走り回る兵士や民間の人々らを描写しておりますので、ご安心ください。
色々な立場の人が出てきます。それらの方々の素晴らしさについて、ここで語りたいのですが、それは流石にネタバレになってしまいますので、是非、私のFacebook等で語りあえればうれしいです。特にこの人、私が一番気になった方です(笑)。(写真⑦)
⑦映画中一番気になった方です |
最後までお読みいただき、ありがとうございました。